[Archival Edition] A thorough explanation of powder metallurgy from a professional perspective!
粉末冶金とは?
粉末冶金には、大きく分けてプレス圧縮成形(PM)と金属粉末射出成形(MIM)の2種類があります。ここでは、プレス圧縮成形(PM)について説明していきます。プレス圧縮成形は、金属粉末を金型に充填し、プレス圧縮成形した後、高温の炉にて焼結化させます。成形体は高温で加熱することで、粒子同士が結合され合金化します。表面処理として、各種焼き入れメッキなどの対応可能です。
粉末冶金ではどのような金型が使われている
"一般的に"粉末冶金の金型構造は、主に、上パンチ、下パンチ、ダイス、コアで構成されています。
金型の材質は主にSKD51やSKD11などのダイス鋼が使われています。また、多段式パンチを用いる事により、形状の複雑化い対応します。なお、多段式パンチは大型プレス機で用いられています。
粉末冶金の製造工程
粉末冶金の製造工程
①配合・混合
②成形
③焼結
④後工程
①配合・混合
目的とする製品の性質に応じて、種々の金属粉末を決められた割合で配合し、混合機で均一に均します。
②成形
混合した金属粉末を、金型に注ぎ、自動成型機により常温で圧縮成形します。
③焼結
圧縮した成形体を焼結炉に入れ、融点以下の温度のガス内で加熱し、焼結します。
④後工程
精度や強度を目的としています。後工程では、主にサイジング工程(再圧工程)・機械加工工程・熱処理工程を行い、完成となります。
粉末冶金の製造工程:混合
原料となる2種類以上の金属粉末を配合し混合します。スプレードライヤーなどで完全に乾燥させ、金属粉(きんぞくふん)をつくります。金属粉の原料として使われるのは主に、鉄系、銅系、ステンレス系、チタン系、タングステン系、アルミ系などがあります。特に良く使われる材質は特に炭素、銅、ニッケル、リン、モリブデン、マンガンなどの組み合わせがあります。混合作業中には偏析に注意をしなければなりません。(偏析とは、粉末同士が均一に混ざり合わずに分離した状態をいいます)一般的に、原料メーカーにて混合したプレミックス粉を使用する場合もあります。
粉末冶金の製造工程:成形
金属粉末を金型に入れてプレス機で圧縮し成形します。
非常に高精度な金型を使うため、同じ形のものを高い精度で大量生産することが可能になります。金型のセットには成形トン数や形状によって異なりますが45分~2時間程度の段取り時間を要します。
粉末冶金の製造工程:焼結
金属の粉末を押し固めた成形品を「焼結炉」を使って焼き固めます。金属の粉が一粒一粒が結合し硬く丈夫な製品がで出来上がります。焼結温度・時間は材質によって異なります。一般的に、銅系粉末合金は750度、鉄系粉末合金は1130度、ステンレス系合金では、専用の真空焼結炉で1300度の高温環境で焼結します。
粉末冶金の製造工程:後工程
精度や強度を高めたりする要求がある場合、サイジング(再圧・矯正)、穴あけ、タップ加工などの機械加工、平面研磨などの研磨加工、スチーム処理・浸炭焼入・高周波焼入などの熱処理・メッキなど表面処理を施します。また、ボールベアリングの圧入やフランジ板のカシメなどの組立対応も可能です。
粉末の種類と生成方法
材料として使用される金属粉末として、主に、純鉄粉、ステンレス鋼粉、高速度鋼粉、合金鋼粉、銅粉が挙げられます。他にも様々な種類があり、同時に生成方法も異なります。更には、同じ元素の金属粉でも、生成方法によって異なる特性をもつ金属粉が作られます。
主にアトマイズ法・メルトスピニング法・回転電極法・粉砕法・その他化学的プロセスを用いて酸化物還元法を実施しています。
アトマイズ法
アトマイズ法とは、鉄や銅、アルミニウムなどの地金を溶かし、高圧のガスや水を吹き付けることで凝固させ、金属粉を作る方法です。溶解炉で溶かした金属を、小さなルツボに流し込みます。ルツボの底面の穴から流れ出た液状の金属に、高圧のガスや水を吹き付け、飛散・凝固させ、粉末状にして生成します。これをアトマイズ粉と呼びます。
酸化物還元法
酸化物還元法とは、鉄や銅などの粉末生成において、微細な酸化物粉を水素・一酸化炭素・アンモニア分解ガスなどの気体で還元することで生成する方法です。還元温度や時間を調整することで、生成粉の粒度調整が容易に行えるので、成形性・焼結性の良い金属粉を得ることが可能になります。
電解法
電解法は、電気分解でマイナス極に粉末を析出させることで金属粉を生成する方法です。電気分解を行うと、通常、プラス極面では金属の溶解や酸素の発生が起こり、マイナス極面では金属の析出、水素の発生が起こります。この仕組みを利用して、金属粉を生成し、脱水、乾燥後、粒度別に分離して使用します。これを電解粉と呼びます。
粉砕法
搗砕(つきくだく)→主にスタンプミルを用い、原料粉を扁平加工します。
分級→サイクロンなどの気流分級機を用いて、製品に応じた粒度分布に調整します。
艶付け→粉末を表面処理することで光沢とリーフィング性(塗膜や印刷面に金属粉が浮上して鏡面効果を生じる性質)を与えます。
混合→品種によりペースト加工などが必要な場合、粉末と処理剤などを混合します。
均一液滴噴霧法
均一液滴噴霧法では、不活性ガス雰囲気内で溶融した金属を耐熱容器から均一に滴下します。
特殊な滴下技術により、滴下する金属は真球状の金属ボールとなり、凝固します。
熱処理法
熱処理→各製法で造られた粉末を原料とし、それらの特性を改善したり、合金化をして新規の合金粉、部分的合金粉を得るために熱処理をします。
粉砕→熱処理で固化した粉末を粉砕します。
節分→使用目的に応じた粒度分布の製品に調整するために粒度別に数段階に篩別します。
混合→粉末が均一になるようにします。
規格→規格に合っているか検査をします。
粉末の種類と生成方法
溶解プロセス
溶解プロセスは目的とする合金を調整し、不純物を除去し、アトマイズするために必須工程であるが、るつぼや雰囲気と合金との反応から望ましくない元素で汚染されることもあるため、次に述べるように様々な溶解プロセスが合金の種類に応じて使い分けされています。通常溶解のための加熱の熱源は、電気であり、誘導加熱あるいは炭素電極によるアーク溶解が使われるが、その他にも電子ビーム加熱やプラズマアーク加熱も使われています。
大気溶解
大気溶解はるつぼを使用する溶解法で、溶湯が参加するのを防止する必要がある場合には、フラックスや、不活性ガスあるいは、導電性スラグを利用します。溶解のエネルギーは通常誘導加熱か炭素電極によるアーク溶解が使われます。酸化しやすい元素を多く含む合金の場合には必ずしも適していないが、経済性と生産性に優れているため必要に応じて広く使われます。真空溶解 真空溶解はるつぼを真空容器の中に設置し、真空状態で溶解するので、大気溶解には適さない合金の場合に使用されています。加熱方法として、通常の誘導加熱のほか、電子ビームや後述するプラズマアーク加熱も使用されることがあります。溶解後不活性ガスなどで大気圧に戻してからガスアトマイズします。
水冷銅るつぼ溶解(浮遊溶解)
るつぼは通常セラミックやカーボンでできているが、合金元素によってはるつぼとの反応が起こり、正常な溶湯が得られない場合に用いる方法です。
不活性ガス中で電磁浮上の原理により溶湯を無接触状態で浮遊させ、名目上銅るつぼとなっているが、熱伝導の良い銅を使い、それを水冷することで、溶けた合金そのものがるつぼ表面と接触しても凝固して層を作る。それが常に冷却されて、いわば第二のるつぼを形成することで銅が合金中に侵入することを防止して、清浄な溶湯を得る方法である。チタン合金の鋳造時にも使用される溶解法です。
プラズマ溶解
超高温のプラズマアークで線材や棒材の先端部分、あるいは粉末粒子を溶解し、その溶湯を遠心力等でアトマイズするときに使用するるつぼなし溶解法です。プラズマアークの温度が極めて高いので、高融点金属や金属間化合物、炭化物なども瞬時に溶解できるメリットがあります。またプラズマジェットそのもので融解と同時にジェットでアトマイズする方法もあります。
粉末冶金のメリットについて
◎金型による量産化で切削品に比べ大幅なコスト削減ができます
◎高精度な金型でニアネットシェイプを実現でき後加工を減らすことができます
◎部品の軽量化ができます
◎多孔質の特性を生かし製品に含油(含浸)することができます
◎鋳造では困難な「融点の高い」金属の成形ができます
◎鋳造では困難な合金でも均質な金属の成形ができます
粉末冶金のデメリットと欠点について
×全長が長い形状の部品の生産にはあまり向きません
×焼結時の膨張・収縮によって寸法精度が落ちることがあります
×一定金額の金型投資な必要なため、総ロットが少ない部品の生産にはあまり向きません
×鋼材と比較すると密度が高くないため、高強度が要求される箇所ではあまり向きません
粉末冶金の強度について
粉末冶金の材質(各種類記号)はJIS規格によって明確に定められています。含油軸受の材質では圧環強さ、機械部品の材質では引張強さで機械的性質を表しています。尚、硬度は規定されておりませんが、SMF4030ではHRC28前後です。硬度を高めたい場合、後工程で熱処理(浸炭焼入)を行います。
粉末冶金と焼結の違い
「焼結」とは、「金属粉末を加熱すると、粉末が固まって焼結体 と呼ばれる緻密な物体になる現象」のことですが、広く一般的には、焼結=粉末冶金として理解されています。また、焼結はプレス圧縮成形(PM)のことを指すことが多いように思われます。MIMも粉末冶金の中に含まれますが、こちらはミムと呼称されています。
粉末冶金とmimの違い
粉末冶金はPowder Metallurgy の頭文字からPMと表記されます 粉末冶金の呼称で呼ばれています。MIMはMetal Injection Molding の頭文字をからMIMと表記されます。MIM(=ミム)の呼称で呼ばれています。粉末冶金は、「圧縮成形プレス」で成形体となり、焼結工程を経て焼結体になります。これに対し、MIMは「射出成形」で成形体、脱脂、焼結工程を経て焼結体になります。
わたしたちが、粉末冶金で作れるもの
自動車部品
バイク部品
モーター部品
OA機器用部品
アミューズメント関連部品
住宅設備(トイレ)用部品
自動車部品
パワーウィンドウ装置の軸受や電動リクライニングシートの可動部ギアを製造しています。
バイク部品
鍵差し込み部の外装パーツを製造しています。
モーター部品
モーターシャフト先端に取り付けるギア・プーリー・スプロケット・ギアヘッドなどの駆動系のパーツを製造しています。
OA機器部品
コピー機、FAXの紙搬送部の銅系含油軸受や駆動部に使用する各種機械構造部品(焼結)は多数製造実績があり、小ロット多品種で対応いたします。パソコンではヒンジ部分に使用する摺動部品の実績もございます。
アミューズメント関連部品
パチンコ玉、メダルカウンターの機構部品を製造しています。
粉末冶金で作れるもの:住宅設備(トイレ)用部品
トイレ便座の蓋開閉装置の機構部品を製造しています。
粉末冶金でお困りならキヨタで!
当社では、ご予算・製品サイズ・製品仕様・加工の難易度に合わせて、最適な国内外のメーカーをスピーディにご紹介させて頂きます。また、材質や形状におけるコスト提案をさせていただきます。また、他の製法(切削、MIMなど)についても、ワンストップで見積対応いたします。同時に、資材調達のご担当者様のソーシングのお手伝いをさせて頂きます。
FAQ
質問:粉末冶金とは何ですか?
答え:粉末冶金とは、金属粉末を金型に入れてプレス圧縮成形した後、高温の炉に入れて焼き固め、成形体は高温で加熱することで、粒子同士が焼結現象を起こし結合し合金化することです。
質問:キヨタで発注するメリットは?
答え:ご予算・製品サイズ・製品仕様・加工の難易度に合わせて、最適な国内外のメーカーを迅速にご紹介させて頂きます。また、材質や形状におけるコストダウンの提案をさせていただきます。